お米 is ライス

C#やらUnityやらを勉強していて、これはメモっといたほうがええやろ、ということを書くつもりです

ロビンソンはタイムリープの歌だった説(構成編)

ロビンソンとは言わずもがなスピッツの御三家のうちの一角であり、その中でも特に歌詞・音楽性ともに話題になることの多い曲である。
この楽曲をリリースした頃のスピッツはイマイチ売れ切らずにくすぶっていた上に、特に目立ったプロモーション活動や有力なCMやドラマとのタイアップもなかったにも関わらずなぜか最終的にミリオンヒットをたたき出した化け物曲であり、それほどまでに不思議な魅力を持っている曲なのである。

とまあお約束の礼賛はさておき、何番煎じになるか考えるだけでも気の遠くなるようなこの楽曲の歌詞解釈ですが、自分なりに割と筋がいいんではないかという答えを見つけたのでここにメモしておきたいと思います。
ポイントは文の区切り方でした。Aメロの前半・後半というようにブロックごとに意味を読み取りがちなんですが、草野さんの歌詞って結構文脈が複数のブロックにまたがってることが多いんですよね。
(「楓」なんかもそうで、あれも2番のAメロとBメロは繋げて解釈するのが正解なんだと思っています。)

というわけで歌詞に適切な区切りをつけるところから始めましょう。

歌詞に区切りをつける

といっても単に文法通りに句読点を付けるだけではなく、ちゃんと”意味の通る”文章にすることを心がけます。
(草野さんの歌詞はファンであればあるほど、はっきりとした意味を見出すのを諦めてしまいがちです)

1番Aメロ前半

新しい季節は
なぜかせつない日々で
河原の道を自転車で
走る君を追いかけた

「新しい季節はなぜか切ない日々で、河原の道を自転車で走る君を追いかけた」
この部分だけに句読点を付けるとこうなりますが、まだ句点は入りません。この文章は後にくる名詞を説明するいわば名詞節、英語でいうところのthat節にくくられた部分なのです。
というわけで次に行きましょう。

1番Aメロ後半

思い出のレコードと
大げさなエピソードを
疲れた肩にぶらさげて
しかめつらまぶしそうに

1番Aメロ前半はすべてこの「思い出のレコードと大げさなエピソード」を説明している文章です。
つまりはこの部分までで「(新しい季節はなぜか切ない日々で、河原の道を自転車で走る君を追いかけた)思い出のレコードと大げさなエピソード」という名詞を形成しています。

次の「疲れた肩にぶらさげてしかめつらまぶしそうに」ですが、ぶらさげているのは当然直前のレコードとエピソードになります。
レコードとエピソードを肩にぶらさげた状態で、何かをまぶしがって顔をしかめているのです。
そしてこのブロックの最後は「そうに」と連用形になっていますから、まだ文章としては終わっていません。
というわけでさらに次のブロックへと続きます。

1番Bメロ

同じセリフ同じ時
思わず口にするような
ありふれたこの魔法で
つくり上げたよ

前ブロックの「まぶしそうに」という形容はこの「思わず口にする」という動詞にかかっています。
わかりやすくするため少し順序を入れ替えると、「同じセリフ同じ時、しかめつらまぶしそうに思わず口にするような」となり、直後の「ありふれたこの魔法」を説明しています。
そして「この魔法で」は次に来る「作り上げたよ」という動詞の補語となっています。

ここまでの文章をまとめると下記のようになります。
「(((新しい季節はなぜか切ない日々で、河原の道を自転車で走る君を追いかけた)思い出のレコードと大げさなエピソードを疲れた肩にぶらさげてしかめつらまぶしそうに)同じセリフ同じ時思わず口にするような)ありふれたこの魔法で作り上げたよ」

括弧が深くてわけがわからないと思いますが、おそらくこれで区切り方はあっていると思います。

恐ろしいことに気が付いたでしょうか?
そうです。この歌詞はここまででようやく1つのまとまった文節の動詞と補語になっているのです。
さらに恐ろしいことに、なんとまだ終わりではありません(!)。
なぜなら「何を」作り上げたかという目的語がまだ示されていません。

1番サビ

誰も触れない二人だけの国
君の手を離さぬように
大きな力で空に浮かべたら
ルララ宇宙の風に乗る

何を作り上げたのか。それはこの「誰も触れない二人だけの国」です。
なんとAメロとBメロはこの「二人だけの国」を説明するためのまとまった文節だったのです。

そしてここまででようやく目的語であり、さらに後の歌詞へと続きます。

「君の手を離さぬように大きな力で空に浮かべたら」は英語でいえばWhenやIfでくくられた文節ですね。
そしてここまでの文章の本体となる動詞が「ルララ宇宙の風に乗る」となります。

適切な区切りをつけるといいましたが、驚くべきことにここでようやく一区切り、一つの文章なのです。
わかりやすく簡略化すると下記のようになります。

『(君を追いかけた思い出をぶらさげて思わず口にするような)魔法で作り上げた二人だけの国を空に浮かべたら宇宙の風に乗った』



そりゃあ歌詞の解釈がまともにできんわけだ。今までブツ切りの文章を読んでいたんだから。




では同じように2番の歌詞も区切りをつけていきましょう。
といっても2番は1番と比べるとかなりわかりやすいものになっています。

2番Aメロ

片隅に捨てられて
呼吸をやめない猫も
どこか似ている抱き上げて
無理やりに頬寄せるよ

いつもの交差点で
見上げた丸い窓は
うす汚れてる
ぎりぎりの三日月も僕を見てた

このブロックは細かく三つの文章になっています。
「~~無理やりに頬寄せるよ」
「いつもの交差点で見上げた丸い窓はうす汚れてる」
「ぎりぎりの三日月も僕を見てた」
がそれぞれ独立した文章になっており、半分解釈の域ではありますがBメロの「夢のほとり」の情景描写となっています。

2番Bメロ

待ちぶせた夢のほとり
驚いた君の瞳
そして僕ら今ここで
生まれ変わるよ

このブロックもこれだけで一つの文章になっていますが、1番Bメロと同じようにサビに登場する「二人だけの国」を説明する文節でもあります。

2番サビ

誰も触れない二人だけの国
終わらない歌ばらまいて
大きな力で空に浮かべたら
ルララ宇宙の風に乗る

「二人だけの国」は1番にも登場しましたが、ここでは「そして僕ら今ここで生まれ変わる」場所として説明されています。
あとの構成は1番と同じですから省略します。
2番Aメロ後半から曲終わりまでの歌詞を大雑把に訳すと下記のようになります。

『(いつもの交差点という)夢のほとりで待ち伏せて出会った君は驚いた顔をした』
『そして僕たちは二人だけの国に生まれ変わり、その国を空に浮かべたら宇宙の風に乗った』

歌詞の構成

ここまで長くなりましたが、歌詞の構成をまとめるとこのようになります。

1番
『(君を追いかけた思い出をぶらさげて思わず口にするような)魔法で作り上げた二人だけの国を空に浮かべたら宇宙の風に乗った』

2番
捨て猫を抱き上げて頬を寄せた』
『いつもの交差点で見上げた丸い窓はうす汚れてる』
『ぎりぎりの三日月も僕を見てた』
『(上3つで描写したような)夢のほとりで待ち伏せて出会った君は驚いた顔をした』
『そして僕たちは二人だけの国に生まれ変わり、その国を空に浮かべたら宇宙の風に乗った』

自分としてはかなり正確に構成を読み取れたと思っていますが、異論は認めます。
というか、そもそも草野さんも言っているようにロビンソンの歌詞解釈に答えなんかないのかもしれない。
しかし、このように構成したうえで一つ一つ意味を読み取っていくと確かに何らかのストーリーが見えてくる気がしています。

ここまで読んでいただいた方は私がどういう解釈をこれから行おうとしているか薄々わかっているかもしれませんが、解釈については次回詳しく述べようと思います(やる気があれば)。